次々と起こる現地でのイレギュラー対応。
海外プロジェクト「ジャパンアニメタウン」成功のカギは?

  • 野澤中途6年目
  • 松浦新卒8年目
2023年3月1日時点

電通ライブの仕事は、国内にとどまらず世界各地に広がっています。2022年、サウジアラビアの首都リヤドに誕生した、世界10カ国の文化を体験できるテーマパーク「ブルバードワールド」。日本エリアでは、アニメコンテンツやジャパニーズカルチャーを集約した「ジャパンアニメタウン」を展開しました。電通ライブが制作全般を担当した本プロジェクトでチャレンジしたことや大変だったことを、メンバーの野澤、松浦に振り返ってもらいました。

壁の高さや位置が違う!?
海外現地の作業者をディレクションするには?

−はじめに、ジャパンアニメタウンの概要を教えてください。

野澤

サウジアラビア政府が主催する大型イベント「リヤドシーズン2022」の目玉コンテンツとして、サウジアラビアの首都リヤド中心部に誕生したテーマパーク「ブルバードワールド」にて、アニメを中心に日本のカルチャーを体験することができるパビリオンとして作られたのが「ジャパンアニメタウン」です。広さ約40,000平方メートルのエリアに約30のアニメタイトルが出展し、展示ブースやコンテンツが上映されているほか、日本を代表する観光地を再現した施設が立ち並びました。

−サウジアラビアの案件とのことですが、どのような経緯でプロジェクトがスタートしたのでしょうか?

松浦

2019年に電通グループで「サウジアニメエキスポ」を担当したことがきっかけで、サウジアラビアの政府系イベント会社とのお付き合いが始まり、その流れでジャパンアニメタウンの企画提案を求められ今回の案件に繋がりました。役割分担としては電通が営業や企画を担い、電通ライブが制作を担当しています。通常、国内のプロジェクトでは我々が施工や運営にも携わることが多いのですが、今回はサウジアラビアの政府系イベント会社が現地の施工会社や運営会社に直接発注しているため、図面や運営計画を作るところまでが作業範囲となります。

−そうすると、アイデアを具体的な形に落とし込む作業が中心で、施工や設営など現地でのものづくりは担当しなかったのでしょうか?

野澤

はい、アイデアを実現可能な図面や計画に落とし込む作業が中心…のはずだったのですが、現地のサプライヤーが図面の意図を理解出来ていないことも多々あったので、実態としては現場に張り付いて図面と同じようにできているかを確認する作業のほうがウェイトは大きかったですね。それこそ、壁の高さや位置も日本ならミリ単位で正確に合わせるところを、センチ単位の誤差は気にせずに作ってしまう場合もあるので、状況に合わせ柔軟な対応を行う必要がありました。

松浦

もともと計画していたエリアのレイアウトがいつの間にか変わっていたこともありましたよね(笑)。商習慣の違いで言うと、アニメコンテンツに対する理解を擦り合わせるのも大変でした。日本ではコンテンツの世界観にマッチしたものしか展示や映像に使えないというのは常識なのですが、その辺が理解されずに、アバヤ(女性が肌を隠す全身黒い衣装)を着せたキャラクターを作りたいと言ってきたり、勝手にサイズを変えてしまったりすることも多々ありました。当時は本当に大変でしたが、今となっては全て勉強・経験だと思っています。(笑)

商習慣の違いには、落としどころを見つけて対応。

−図面や計画と異なる事態が起きた時、現場ではどのように対応したのでしょうか?

松浦

絶対にできないものは、できないと言い続けるしかないのですが、彼らが作ってきたものを全て跳ね除けると話が前に進まないので、落としどころを見つけられそうな部分があれば、電通やその先にいるコンテンツホルダー、サウジアラビアの政府系イベント会社と交渉しながら調整していきました。

野澤

適切な時間をかけてきちんとプロセスを踏んで提案すれば実現するアイデアもあったと思うのですが、さすがに現地で勝手に作ったものはNGが出てしまうので、とにかく細かい調整が多かったです(笑)。

松浦

そもそもサウジアラビアはものを作る時のタイムスケジュールが日本よりも短くて、本来は1年ぐらいかけて準備することを2、3ヶ月でやってしまうんです。その時間感覚の違いに対応するのも大変でしたね。

野澤

でも、そのスピード感というか、段取りが何もできていない状態から完成まで持っていく瞬発力は本当にすごいと思いました。

−完成まで非常に大変だったと思うのですが、会期中の来場者の反応はどうでしたか?

松浦

まず、日本エリアの派手な装飾や仕掛けを喜んでくれる人が多くて嬉しかったです。それから、日本だと展示や体験を楽しむ人が多いと思うのですが、サウジアラビアの人はエリア内をただ歩いて楽しんでいる人が多かったのは印象的でした。家族でちょっとご飯を食べて、ぶらぶら歩きながら写真を撮るとか、ただ椅子に座っているだけとか、何かアクティビティを楽しむというよりは非日常感そのものを楽しんでいる感じがしましたよね。

野澤

そうですね。その中でも日本のエリアに人がいっぱい集まって、楽しそうに写真を撮っている様子を見た時は、苦労が報われた、やって良かったなと思いました。わざわざ話しかけてきて好きな日本のアニメを教えてくれる人も多かったですし、ちょうどサッカーW杯でサウジアラビアと日本が強豪国に勝った時だったので、「おめでとう!」とお祝いしてくれる人もいましたね。

「ジャパンアニメタウン」の街並みと巨大なLEDの数々!(野澤撮影)

電通ライブの強みは、
社内外の垣根を超えてプロジェクトを成功に導く力

−今回のプロジェクトを振り返ってみて、電通ライブならではの強みが発揮できたと思うポイントはありますか?

野澤

時間が限られている中でイレギュラーな事態が発生した時も、社内外の仲間と力を合わせて解決に導く力があるからこそ、臨機応変に対応できたのではないかと思います。

松浦

本当にその通りだと思います。電通グループも含めて強力なネットワークがあり、社内外の枠組みを超えて連携できるプロフェッショナルがいるからこそ、どんな問題が発生しても解決まで持っていけたんじゃないかと思います。

野澤

プロジェクト全体を見渡して、成功に導くこと、とにかく最後の最後まで責任を持って考えているところも電通ライブらしさかもしれませんね。完成したら終わりとか、部分的にうまくいったら終わりではなく、成功した!という手応えが得られるまでは、プロジェクトが終わらない感覚があります(笑)。

電通グループと協力会社さん、チーム全員でパチリ!@現地

−最後に、電通ライブで働く人に必要なマインドを教えてください。

松浦

今回のプロジェクトでも顕著に感じたことですが、やはり“垣根を作らないこと”が大切だと思います。それは興味関心やジャンルの垣根を作らないということだけではありません。大きいプロジェクトであるほど、「うちの会社の担当はコレ。自分の担当はコレ」と縦割りになりがちなのですが、状況に応じて少しでも有機的に動けるかどうかがプロジェクトの成功を左右する気がします。

野澤

プロジェクト進行中にはいろんなことが起きますが、最終的には成功まで持っていくんだという強い意志があれば、みんなで同じ方向に進んでいけると思います。そこが電通ライブならではの強みであり、ここで働く醍醐味だと思います。