DENTSU LIVE | 電通ライブ

人から社会までも潤すグランピングへ(前半)

  • March / 11 / 2021

多くのメディアで取り上げられ、今やアウトドアの楽しみ方として定着したグランピング。その広がりはやがて、個人だけではなく社会まで癒やす力となり得るのではないか――。
そんな可能性に貢献するため2019年、「ABC Glamp&Outdoors」は朝日放送や電通グループなどの出資で設立されました。中心となったのは、日本初のグランピング・マガジン「Glamp」の発行責任者・編集長の吉村 司氏。日本におけるグランピングの先駆者です。そこで、これからのグランピングと電通ライブの役割、そして「ABC Glamp&Outdoors」が目指すものについて、吉村氏と弊社の成影 大にたっぷり語り合ってもらいました。

前半では、グランピングの現状から設立の経緯までを語ります。

 

グランピングの現在。

成影:コロナの影響で屋外での体験価値が高まっていることもあり、グランピングもすっかり世間に定着しました。その魅力は何だと思いますか?

吉村:インドアとアウトドアのいいとこ取りをスタイリッシュにできる点ですね。キャンプだと自分で購入したギアを自分で建てて、食材も持参して、火を起こして、料理をする。テントを建てるだけでも初心者にとってはハードルが高い。だけど、グランピングは手ぶらでいいんです。テントもベッドも食材もバーベキュー設備も、みんなある。トイレもあるし、シャワーもあるから女性も困りません。それで自然を楽しむことができる。人気は出ますよね。

成影:キャンパーからは「そんなのアウトドアじゃない」って厳しい声もありました。

吉村:その通りなんですから反論のしようがない(笑)。グランピングはスタイルなんです。日本の気候にも合った、大人から子どもまで楽しめる、ひとつのアウトドアスタイル。四季のある日本は、実はテントを中心としたキャンプには厳しいところがある。梅雨をはじめ雨は多いし、風も強い。初めてのキャンプの日が悪天候だと、女性の方はもうそれ以後は無理となります。

成影:キャンパーを目指す男性は、雨に打たれて一人前になっていくと思っている人が多くて、どんな環境下でもキャンプを楽しもうとがんばったりしますよね(笑)。

(左奥)成影 大、 (手前)吉村 司

吉村:それじゃ特定の人の限られた楽しみで終わるじゃないですか。自分のテントじゃないけれど自然を感じることができる空間があってもいいよねという考えが、ドーム型のテントになったり、宿泊施設になったり。昔は寝袋で寝るもんだったのがベッドになり、風呂やトイレなど水まわりも整うことで清潔になり、女性なら化粧もできるようになる。つまりこれまでの常識にとらわれず、いかに自然を快適に楽しむか、それを突き詰めているのがグランピング。これなら私でも楽しめると気づいた女性がその感動を広めていったんです。

成影:女性が、グランピングの人気拡大の鍵となったということですね。われわれイベントの世界でも、集客の30%はSNSで、その中心は女性です。そういった面では、イベントとグランピングは同じですね。

吉村:昼はアウトドアを楽しんで、夜はテント内のベッドに持ち込んだクッションやファブリックで自分らしい空間を演出できる。えっ、これがアウトドアなの?そんな“映える”画像や映像がどんどん発信されて、キャンプとはまったく異なるグランピングというスタイルが定着していったんですね。

「ABC Glamp&Outdoors」設立のきっかけ。

成影:吉村さんと弊社の出会いは、兵庫県のリゾート施設のリニューアルプロジェクト。施設内のエンターテインメントエリアの相談が弊社にありました。リサーチするとその商圏に大人向けプールがなかったので、大型スライダーを含むプール施設を企画&プロデュースしたのですが、それだけではまだ足りない。立地を考えて浮かんできたのが、当時、話題になりかけていたグランピングです。

吉村:6年ほど前ですから、グランピングはアウトドアリゾートの新しいカタチという認識程度でした。

成影:アイデアはいいとしても、誰とチームを組めばいいか。そこからのスタートでした。いろいろ調べると関西には「Glamp」というグランピング・マガジンを編集されている吉村さんがいるじゃないか、となったわけです。海外の事例にも詳しいので最適だと。

吉村:私も淡路島などで小さなプロジェクトは担当していましたが、そのときのご相談ほど大きな案件は初めてでした。ほとんど電通ライブさんにおんぶにだっこという感じで勉強させていただきました(笑)。

成影:ご謙遜を(笑)。われわれは設計施工や行政との調整は得意だけれど、グランピングの企画やオペレーションのノウハウがない。価格設定とか、ファシリティーやゴミの収集管理など、それはその道の専門家と組まなければいけない。

吉村:反対に、われわれはアイデアやノウハウはあるけれど、空間のデザインや、補助金などの仕組みも申請手続きも疎い。グランピングに関するそれぞれの凹凸をうまく補うパートナーシップが築けました。

成影:西日本で最初の大規模グランピング施設だったので、それこそ食材のルート開発からスタッフィングまで、何から何まで一からのスタートでした。大変でしたけど、それを乗り越えたことで、実績とノウハウを手にすることができました。

吉村:私にも、いろいろとプロジェクトの声がかかるようになったのですが、大きな案件は個人ではまかないきれません。それで電通ライブさんに協力をお願いすることが何度かあって、やがて“グランピングには将来性がある”という話になったんですよね。

成影:吉村さんと電通だけでは弱いところがある。もう一社参加してくれれば大きな円になると思っていたところ、朝日放送さんが参加していただけることになって「ABC Glamp&Outdoors」が立ち上がりました。

吉村:その最初の事例になったのが、「SETOUCHI GLAMPING(せとうちグランピング)」。JR西日本が岡山県児島・鷲羽山エリアに2020年9月~2021年1月の期間限定でオープンした施設でした。

SETOUCHI GLAMPING

SETOUCHI GLAMPING

成影:地域や行政を巻き込む形ともなれば、グランピングもスケールの大きなプロジェクトとなります。設計や施工、デザインなど個別な案件と同時進行して、行政との調整や建築関係の申請などが必要です。弊社はそれに関するスキルもあればプロフェショナルをネットワークすることもできます。プランニングから納品まで、いろいろな局面でサポートできるのが強みです。

吉村:電通ライブさんとグランピングがつながらない、という人もいますが、感動体験を与える点ではイベントも自然も同じ。エンターテインメントとして、グランピングには大きな可能性がありますよね。

成影:はい。私は大学時代に自転車部だったので、合宿や新人歓迎会でキャンプへよく行ったものです。父の友人がヨットを持っていて、瀬戸内を巡って島でキャンプしたことも大事な思い出です。仕事だけの人生では息がつまります。都会で暮らしながらも、たまには自然と交流しなければ心身のバランスが取れないこともあるでしょう。そういう意味では弊社も同じ。スポーツや音楽、博覧会だけでなく、そこに自然をプラスすることで、提供できる感動体験も、広く、深まっていくと思いますね。

 

後半ではグランピングの可能性、そして将来の取り組みへと話は展開していきます。ご期待ください。
*後編につづく

吉村 司(よしむら つかさ)

ABC Glamp&Outdoors 代表取締役COO

1960年大阪生まれ。甲南大学卒業後、朝日ファミリーニュース社を経て、フリーライターに。1990年にマガジンハウス入社。ハナコウエスト編集部で、デスク、副編集長、編集長を歴任して、独立。編集プロダクションや飲食店、PR会社を設立後、2012年に淡路島の五色町にキャンプ場「FBI」を仲間たちと開業。のちに鳥取県・大山にFBI2号キャンプ場も開業。日本の「グランピング」の先駆者となるべく活動開始。2015年9月には、日本初のグランピング・マガジン「Glamp」を講談社より創刊。発行責任者、編集長に就任。2017年大阪駅前で都市型グランピングパーク「ウメキタ!!グランピング&リゾート」、大阪・肥後橋で屋上グランピングレストラン「アンバー・グランピング」をプロデュース。2018年、「ウメキタ‼グランピングパーク第2期」「パームガーデン舞洲」プロデュース。2019年、朝日放送、電通、Glamp株式保有の新会社ABC Glamp&Outdoors を設立。代表取締役COOに就任。

成影 大(なるかげ だい)

電通ライブ リージョンユニット パブリックプロジェクト部 部長

ニューヨークに語学留学後、電通テック入社。1995年の阪神・淡路大震災後に始まった神戸ルミナリエの立ち上げに参画後、中核メンバーとして継続してイベントディレクションを担当。その後、国内外のアーテイストとのコラボなどにより御堂筋ランウェイ、日本橋ストリートフェスタ、京の七夕、神戸マラソン、花火大会他、数々の行政イベントの立ち上げや民間企業のプロジェクトをプロデュース。