DENTSU LIVE | 電通ライブ

人から社会までも潤すグランピングへ(後半)

  • March / 11 / 2021

グランピングの可能性と感動体験を社会へ提供するために生まれた「ABC Glamp&Outdoors」。その取り組みはどのように広がっていくのでしょうか。後半は、いま取り組んでいること、これから目指していきたいことを、引き続き吉村司氏と弊社の成影大にたっぷり語り合ってもらいました。

 

「ABC Glamp&Outdoors」と電通ライブができること

吉村:電通ライブさんと一緒にできることによって、日本で展開できるグランピングの可能性は大きく広がると思っています。

成影:それはうれしいですね。具体的にどんなことが考えられますか?

吉村: 電通ライブが手がけるイベントにグランピング要素を組み入れれば、感動体験を高めることができます。例えば音楽イベント。野外フェスティバルの一角にグランピング空間があると、音と自然だけでなく、食べたり、飲んだり、泊まったりするミュージックリゾートを日本でも提供できます。海外では多くの事例があるのですが、日本では未開発の領域です。

成影:ぜひ取り組みたいですね。音楽イベントがミュージックリゾートになるとイベントの体験価値も高まります。その考えを広げると、音楽だけでなくいろいろなイベントに応用できます。

吉村:そうなんです。スポーツでも博覧会でも大規模なイベントになればなるほど、交通と宿泊がとても大きな課題になるのですが、会場の近くにグランピングのような食事も宿泊もできる空間があれば、その課題に少しは応えることができると思うんです。

成影:国際スポーツ大会などで、海外からのお客さまのモビリティーパークとして機能できればニーズは絶対にありますね。実現に向けて、まずは2020年に「ABC Glamp & Outdoors」が手がけた「SETOUCHI GLAMPING(せとうちグランピング)」や「うめキタ!!BBQグランピングパーク」など、事例と実績を積み重ねていくことが大切です。

うめキタ!!BBQグランピングパーク

吉村:大規模なプロジェクトほど企業や行政とのパートナーシップが不可欠。電通ライブは各地方の行政とのネットワークがあります。地域の課題を掘り起こし、それに応える企画をつくり上げていくことにも長けている。大きな企業と付き合うノウハウがあるし、企画や設計や図面などタイムリーに提案できるネットワークがあります。心強いですね。

 

コロナ禍で再確認した、グランピングの可能性

成影:2020年は世界中がコロナ禍によって大きなダメージを受けて、停滞や自粛を余儀なくされました。それは「ABC Glamp&Outdoors」も同じなのですが、その中で見えてきたグランピングの役割もありますね。

吉村:はい。再確認したと言ってもいいのですが、これからの日本の課題にグランピングは応えることができるということです。例えば地方創生などですね。

成影:その他にも災害対策や脱炭素社会、さらには子育て支援にもグランピングを役立てることができるのではないでしょうか。

吉村:地震や台風で大きな被害に襲われたとき、被災者、特に高齢の方には避難中もできれば快適に過ごしていただきたい。避難所における集団生活のストレスは並大抵のものではありません。かといってテントで野宿というわけにもいきません。そんな時にグランピングが生きてきます。われわれのトレーラーハウス(移動式宿泊空間)が役立ちます。

成影:全国のグランピングパークに点在させているトレーラーハウスを一斉に被災地へ走らせて、被災された方に使っていただくのですね。

吉村:トレーラーハウスに太陽光発電設備を取り付けて、エネルギーを自足できるようにすると、インフラ状況が厳しい被災地でも電力をまかなうことができます。グランピングパークでも電力を自給自足できれば、脱炭素社会への貢献にもなります。

成影:トレーラーハウスって、居住空間にばかり目が行きがちですが、吉村さんはいざというときに長距離を走れる車両機能や、脱炭素への貢献も意識したトレーラーハウスの開発に取り組んでいます。

吉村:もちろん普段は、グランピングパークなどでアウトドアを楽しむために使ってもらいます。ご家族に火の起こし方やキャンプの楽しみを教えるイベントを行えば地域振興の一役を担えるし、親御さんもお子さんも楽しめて子育て支援にもつながります。そしていざという時には被災地へトレーラーハウスを移動させる。このような取り組みは地方創生に十分活用できると考えています。

 

当面の目標は、大阪万博への出展

成影:コロナ禍によって移動の自粛が起きると、飲食や観光は大きなダメージを受けるじゃないですか。それはグランピングも同じ。だからといって来場者を待つだけの受け身でいては先が開けない。グランピングを受け身の事業ではなく、必要とされるコンテンツとして、こちらから働きかけられる事業にしなければ、という意識の変化はありましたね。

(左)吉村 司氏、(右)成影 大

吉村:トレーラーハウスがあるとクライアントへ提案する際に有利なんです。グランピングをイベント的感覚で提案できるからです。

成影:更地に一からつくり込むのではなく、既存の空間を利用できるっていうことですよね。

吉村:グランピング事業の依頼は、これまである施設を活性化したい、リノベーションしたいという案件が圧倒的に多いんです。自然の中では建築条件など厳しいものがたくさんあって、つくり込むよりトレーラーハウスを持ち込んでイベント的に設営する方が効率的なこともあります。つくるのではなく、ある意味“置く”という発想。その思いと可能性を強く意識したのは電通ライブさんと一緒に仕事をしたおかげです。

成影:自然の中とか災害時には、実はその発想の方が必要条件を満たすんですよ。時間とかコストとか、もちろん過ごす人のマインドの部分も含めて。建築的なやり方よりイベント的な手法の方がスピード感は格段にありますから。

吉村:これまでのグランピングは個人の暮らしを満たすものだったのが、そのノウハウを生かせば社会を潤すことができると思っています。

成影:個人への感動を、社会への感動にするグランピングですね。

吉村はい。そしてそんな可能性を、来る大阪万博で展示したいですね。会場内にグランピングパークをつくりたい。それが当面の目標です。

成影:私は個人的にはスペースグランピングです。宇宙旅行が少しずつ現実になってきているので、いつか実現できる日が来るかもしれませんよね。

吉村:宇宙でキャンプ!さすが電通ライブ、描く夢が大きい。実現へ動いていきましょう!

吉村 司(よしむら つかさ)

ABC Glamp&Outdoors 代表取締役COO

1960年大阪生まれ。甲南大学卒業後、朝日ファミリーニュース社を経て、フリーライターに。1990年にマガジンハウス入社。ハナコウエスト編集部で、デスク、副編集長、編集長を歴任して、独立。編集プロダクションや飲食店、PR会社を設立後、2012年に淡路島の五色町にキャンプ場「FBI」を仲間たちと開業。のちに鳥取県・大山にFBI2号キャンプ場も開業。日本の「グランピング」の先駆者となるべく活動開始。2015年9月には、日本初のグランピング・マガジン「Glamp」を講談社より創刊。発行責任者、編集長に就任。2017年大阪駅前で都市型グランピングパーク「ウメキタ!!グランピング&リゾート」、大阪・肥後橋で屋上グランピングレストラン「アンバー・グランピング」をプロデュース。2018年、「ウメキタ‼グランピングパーク第2期」「パームガーデン舞洲」プロデュース。2019年、朝日放送、電通、Glamp株式保有の新会社ABC Glamp&Outdoors を設立。代表取締役COOに就任。

成影 大(なるかげ だい)

電通ライブ リージョンユニット パブリックプロジェクト部 部長

ニューヨークに語学留学後、電通テックに入社。1995年の阪神・淡路大震災後に始まった神戸ルミナリエの立ち上げに参画後、中核メンバーとして継続してイベントディレクションを担当。その後、国内外のアーテイストとのコラボなどにより御堂筋ランウェイ、日本橋ストリートフェスタ、京の七夕、神戸マラソン、花火大会他、数々の行政イベントの立ち上げや民間企業のプロジェクトをプロデュース。