2019.02.06Wednesday, February 6, 2019

イヤホンをしているあなたは、もうサイボーグなのかも知れない(後編)

塚本昌彦
神戸大学大学院工学研究科教授 
日塔史
電通ライブ 第1クリエーティブルーム チーフ・プランナー。

電通ライブでは世の中に感動や驚きを生み出すべく、日々さまざまな挑戦をしています。 この連載では、今注目されている「ヒアラブル」に焦点を当て、電通ライブでAIを中心とした「加速するテクノロジー」を活用したソリューション開発業務を担当している日塔史社員に語っていただきます。

今回はその最終回スペシャルとして、2019年1月16日~18日、東京ビッグサイトにて「第5回ウェアラブルEXPO」(主催:リードエグジビジョンジャパン株式会社)が開催され、大ホールでその基調講演をされたウェアラブルの伝道師として名高い神戸大学・塚本昌彦教授にインタビューを行いました。

前編では「ヒアラブルの今」を概観し、言葉だけに振り回されず聴覚拡張のウェアラブルとして捉える重要性についてと、そこから得られる生体情報をライブ体験に活用できないかについてお話しました。
後編は、いよいよ塚本先生が「サイボーグになる」と公言している核心に迫っていきます。そこでヒアラブルには、どんな可能性があるのか!?

対談中の様子

 

なぜサイボーグになるのか?~その想いの底にあるヒューマニティ

日塔:先生は、「15年以内にサイボーグになる」と仰っていて、「侵襲型」(体の内部に外部から介入していくことでインプラントや臓器移植がそれにあたる。対義語は「非侵襲型」で現在市販されているウェアラブルのほぼ全ては非侵襲型)に対して積極的だと感じます。そのルーツや思いは、何かありますか?

塚本:『攻殻機動隊』などのSFの世界では、もう平気で人間の体の臓器も含めて機械に置き換えて行く話は昔からあって、人間の体自体が約100年で死滅しますから、その壁を乗り越えて行くためにもっと丈夫なものに置き換えていかないといけないと。人間の脳も限界があって歳をとれば衰えますから、その衰えをなくすために脳に直接コンピュータを接続して、食べたものとか孫の顔と名前をちゃんと覚えておくのは幸せな道ではないかと私は思います。私が小さい時に比べたらはるかに脳のことは分かっているし、今の技術進歩の速さと技術的な難しさを両方にらんだ時に100年とか1000年後ではなくて、実は10年20年後の話だという予感があります。

塚本先生の講演の最終スライド

 

塚本:もう一つ、サイボーグになるというのには「生まれながらにしての差をなるべく無くす」という意味もあると思っています。望めば、体内外に機械をつけて、ハンデだった部分を補足したり、人間はいつでも平等になれると。

身体的なものだけでなく、物忘れやアルツハイマー、認知症も機械や技術で解決できればと思っています。
今、みんながシンギュラリティ(人間がAIやロボットと融合して人類自体がアップデートされる特異点のこと)に対して思っているイメージは、たぶん5年後にはがらっと変わって、より強まっていると思う。
サイボーグに関しても今はSFチックでぶっ飛んだ話に聞こえるかも知れませんが、5年後にはそれに向けてのステップがリアルに刻まれると思います。パラリンピックなどで義足を見ていても、すごいなと思います。

日塔:2020年の東京パラリンピックでも、何かあるかも知れませんね。意識改革のオリンピック・パラリンピックになるかも。

塚本:われわれも、ウェアラブルの延長で、サイボーグとしての人間のあり方とか、幸せとかを考えていけたらなと思います。

 

「人類の未来への扉」としてのヒアラブル~ウェアラブルからサイボーグへ

日塔:サイボーグになると公言するようになったのは、結構最近のことですか?

塚本:ウェアラブルを始めた時、一部のメディアの人たちに「これはサイボーグだ」と言われることが多くて、その時は「いやこれはサイボーグではなくウェアラブルです」と答えていました(笑)。

日塔:最初は、否定されていたのですか?

塚本:そう。「サイボーグとウェアラブルの違いは、身体に入り込んでいるかどうかで違うんです」と言っていたのですが、良く考えてみれば差は少しで、「人間との直接的な接続が密かどうか」という違いであって、ウェアラブルの研究をしていたら自然とサイボーグに入っていくのだなと思いました。
サイボーグが人類を本質的に変革し、それを望まない人もいますが、変革して改造していくのには重要な道だと思います。

最初に戻ると「ヒアラブル」っていうのは実は、人間の体の中に入りこんでいくデバイス
としては割と自然ではないでしょうか。
耳の中にモノを入れるのは、非侵襲でありながら体の中に入り込んでいけるイメージがありますので、サイボーグ研究の中でも面白いかも知れません。

日塔:ヒアラブルは非侵襲で体の中に入っていける。良いお言葉を頂きました(笑)。
ウェアラブルとサイボーグの間で、新しい人類への扉になるかも知れませんね。
アメリカのスターキー社の補聴器で「オトレンズ」というのがあって、これはもう完全に体の中に入っています。
鼓膜までの外耳道の半分くらいまで入れるので、つけていてもコンタクトレンズみたいに外から見て分かりません。これからもっと小さくなっていくと更に物理的に脳の方向に行けるかも知れません。

スターキー社「オトレンズ」

 

塚本:口の中に入ってもいいですけどね。

日塔:歯も少し考えたことがあります。「入れ歯が究極のウェアラブルかも知れない」と。唾液から生体情報とれますし。

塚本:研究もあります。歯のインプラントがコンピュータデバイスみたいなことです。
それも含めて一つのウェアラブルデバイスに絞る必要はなくて、身体のいろんな部分にフィルターやセンサーを仕込んで、いろんな情報を使って、新しい豊かな生活を送るのが重要な方向だと思います。耳のいいところは、音声の入出力がコントロールできるところですね。いろんなセンサーを入れられるので、体温を測るのにもいいと思います。

日塔:なるほど、面白い。本日は、斬新かつ、深いお話をありがとうございました!

  • 塚本昌彦 神戸大学大学院工学研究科教授  1964年生まれ。京都大学卒。京都大学大学院工学研究科修了。シャープで無線通信等の開発に携わったのち、95年大阪大学講師に。96年同助教授。2004年に神戸大学に移り工学部電気電子工学科教授。2004年よりNPO法人「ウェアラブルコンピュータ研究開発機構(チームつかもと)」の理事長も務める。

  • 日塔史 電通ライブ 第1クリエーティブルーム チーフ・プランナー。 テクノロジーを活用したビジネス・プロデュースを手掛けており、現在「ヒアラブル」(聴覚の拡張デバイス)によるソリューション開発などを行っている。日本広告業協会懸賞論文「論文の部」金賞連続受賞(2014年度、2015年度)。電通Watsonハッカソン「日本IBM賞」受賞(2017年)。AIおよび先端テクノロジーに関する講演、寄稿多数。

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