DENTSU LIVE | 電通ライブ

【SB 2026 Tokyo】企業のサステナビリティ発信に求められること。

  • March / 05 / 2026

2026年218日(水)・19日(木)、東京国際フォーラムにて「第10回 サステナブル・ブランド国際会議 2026 東京・丸の内(SB 2026 Tokyo)」が開催されました。2日間にわたり、国内外のサステナビリティに通じた有識者や先進ブランドの実践者が集結。企業と社会の未来像をめぐって多角的な議論が交わされました。電通ライブからは2つのセッションに登壇。その内容の一部を抜粋してレポートします。

 

境界線を超える「B2B2S」の視点。サプライチェーン全体を巻き込む共創のかたち

セッション「BtoBtoCで考える、コミュニケーションの新常識」には、当社執行役員CSXOの堀田峰布子が登壇しました。素材メーカーの三井化学、金融機関の三井住友フィナンシャルグループと、サステナビリティ時代における顧客との新たな関係性を多角的に議論する貴重な場となりました。

堀田は、イベント業界長らく抱えてきた「作って、使って、捨てる」というリニアエコノミー(一方向)からの脱却を目指し、サーキュラーエコノミー(循環経済)の概念をいかにビジネスへ組み込んでいくか、最前線の取り組みを牽引する立場から「B2B、B2Cという区分を超えて、生活者の意識や行動変容を促し、新たな需要を自ら創出していく姿勢が不可欠である」と説きました。実装ステップについて、堀田は次のように語っています。

「まず前提として、B2B・B2Cを問わずサステナビリティ経営における共通の課題は、『事業性』と『社会貢献性』の両立にあります。ただし、両者ではビジネスの目的や成功要因が異なります。実務的なステップとしては、まずB2Bで強固な産業間での連携基盤を構築し、その先に消費者であるB2Cを繋ぎ込み、社会循環基盤を構築していく方が、ビジネスとしてスムーズに進展しやすいと考えています」(堀田)

また、B2B企業であっても「エンドユーザーの意識・行動変容」にどうアプローチするかが成否を分けます。堀田が提唱するモデルの核心は、単なる製品供給ではなく、サプライチェーンに関わる全てのプレイヤーを「パートナー」として再定義することにあります。

B2Bのコミュニケーションは、一方通行の広告宣伝から、社会課題を起点とした深い対話へとシフトし始めています。予算を投じ、具体的な議論用の素材を揃えてパートナーと向き合う姿勢こそが、これからのビジネスの新しい姿であることが示されました。
「パートナーシップ」という考え方は、対生活者においても同様に重要です。資源が循環するサーキュラーエコノミーにおいては、生活者は「消費の終点」ではなく、資源を次へ繋ぐ「循環の起点」となるからです。

 

「サステナブルカスタマー」の心を動かし、新たな需要を創出

 

電通グループの調査から、「サステナブルカスタマー」という次世代顧客群の存在が浮かび上がりました。彼らはマーケットの約2割を占め、非常に興味深い特性を持っていると堀田は解説します。

「サステナブルカスタマーは、金銭的なインセンティブがなくても、自らの行動によるCO2削減量の可視化や、回収資源の再利用先に関する情報のフィードバックといった非金銭的インセンティブによって、回収やリサイクル活動に高い参加意欲を維持し続けることが分かっています。さらに、再生プラスチックの利用といった情報を製品の魅力としてポジティブに捉える特徴を持っており、環境に配慮された製品であれば価格が高く設定されていても購入を後押しする傾向が極めて強いのです」(堀田)

こうした新しい需要を確実に捉えるためには、バリューチェーン全体を俯瞰する視点を持ちつつ、直感的に価値を伝える「ラベリング」と、その背景にある意義を浸透させる「教育」を組み合わせることが不可欠です。この二つをコミュニケーションの軸に据えることで、サステナブルな商品が「選ばれる理由」を明確にできると強調します。

セッションの締めくくりにおいて堀田は、サステナビリティ時代の顧客はもはや一方的な情報提供の対象ではなく、企業と共に未来を創る「パートナー」であるという認識を改めて強調しました。企業価値を向上させつつ社会課題を解決していくための共創的なアプローチの有用性は、B2B、B2Cの垣根を超えた普遍的な示唆として届けられました。

 

(参考)株式会社電通 リリース『電通、第4回「サステナブルカスタマー調査」を実施

(参考)@DIME『サステナビリティの〝コスト意識〟は変わるのか?いま企業が考えるべきこととは

 

「健康・経済性」で生活者の心を動かし、信頼性の再構築が求められる企業

 

当社、経営推進局ネクストビジネス開発部シニアディレクターの田中理絵は、「健康と経済性で再定義する、日本のサステナビリティ ―GlobeScan/SB Japan 調査レポートを読み解く―」のファシリテーターを務めました。

GlobeScan服部実氏から解説された調査結果では、33か国平均で50%以上の消費者がサステナブルな商品を購入するのに対し、日本国内では約30%にとどまるという厳しい現実が示されました。

打開策として提示されたのが、社会課題ではなく「個人の実利(健康・経済性)」への翻訳です。Flag社CEO ヴィクトリア・テイラー氏は、NIKEの事例として、スポーツエリートへの訴求から包括的な健康を支える「Nike Well Collective」へ舵を切り、休息やヨガを通じて生活者との繋がりを再構築したと解説しました。Nest村瀬悠氏も、ウェルビーイングは次世代にとっても身近な接点とコメントしました。

また、会場から質問を受けて、サステナブル購買を習慣にするには、自律的な行動を生む「ポジティブに心が動く状態」が不可欠と回答されました。恐怖や不安を煽る訴求は結果として「政府や企業のせい」にする責任転嫁を招いてしまうため、ファッションや食、あるいは価格コンシャス層に向けた実利的なナラティブなど、多様な入り口を用意して主体的になれる鍵を見つける必要があると、田中がまとめました。

サステナビリティを「社会の課題」から「個人の実利(健康・経済性)」へと再定義する。環境配慮の枠を超え、これからのマーケティングの本質を問う本セッションは、サステナビリティを社会実装するための明確な指針を提示するものとなりました。

(参考)電通ライブリリース『電通ライブ人の気持ちを動かす「情動」をカガクする研究開発 組織「情動LABO」を設立